強羅花壇
2002年1月24日昔あるところに、お兄さんとお姉さんが住んでいました。
二人は結婚はしていませんでしたが、すでに同棲生活も6年目で
あうん、つーかーの仲。近所でも評判のおしどり夫婦です。
ある日のことです。お姉さんが勤めていた会社が倒産してしまいました。
二人は去年買ったばかりのベンツのローンが毎月60万もあり、
共働きで稼いでいました。支払いの心配もさることながら
お姉さんは、自分が関わっていたプロジェクトがうまくいかなくて
会社がつぶれてしまったことに、とても自責の念が絶えず、自分を責める
不安定な日々に突入です。
それを見ていたお兄さんは、お姉さんに元気を出させようと、
ちょうど冬だったこともあり、一泊2日の温泉旅行を企画します。
ここぞの時は強羅花壇。プチ高級温泉でゆっくり。
早速予約を取るとその週の週末にお姉さんを連れて出かけました。
妙に明るく振る舞うお兄さんを、お姉さんは実はいとましく思っていましたが
私のために頑張ってくれてることもよく分かりますから、お姉さんは我慢我慢。
笑顔でにっこり応対です。でも、温泉につく頃には、眉毛の辺りがピクピク
引きつってきました。
強羅花壇はとてもゴージャスで、料理もおいしく、プールやマッサージなど
お姉さんはとてもリラックスした気持ちになりました。
入り口で女将が、毎度おこしやす、といったときは一瞬、ムッとしましたが
その夜はお兄さんに感謝しながらぐっすりと眠りました。
次の日の朝、お姉さんが目を覚ますと、隣で寝ていたはずのお兄さんが
居ません。散歩にでも行ったのかな、と思いながらお姉さんも起きあがると
ちょいと羽織って、庭に出てみます。
案の定、庭ではお兄さんがカメラ片手に、見事に切りそろえられた花壇を
ぱしゃぱしゃ撮っていました。朝の7時のことです。
何となくほほえましい光景を、お姉さんは庭の入り口のところから
何を考えるでもなく、ぼーっと眺めていました。
すると、突然お兄さんが、花に向かって話しかけ始めます。
「おーい 元気に咲いてるかな。僕も元気だから安心してね。
今日はね、お姉さんを連れてきたんだけど」
お兄さんの優しい目を見て、お姉さんは驚きました。
そんな優しい眼をしたお兄さんは今まで見たことがなかったからです。
チェックアウトをすますと、車の中でお姉さんは
お兄さんに何気なく尋ねました。
「あなたって、ねえ、もしかして寂しがりやさん?」
「ん? なんだ?何でそんなこと聞くの?」
「ううん。なんでもない」
その時お姉さんは去年のクリスマスのことを思い出していました。
〜つづく
二人は結婚はしていませんでしたが、すでに同棲生活も6年目で
あうん、つーかーの仲。近所でも評判のおしどり夫婦です。
ある日のことです。お姉さんが勤めていた会社が倒産してしまいました。
二人は去年買ったばかりのベンツのローンが毎月60万もあり、
共働きで稼いでいました。支払いの心配もさることながら
お姉さんは、自分が関わっていたプロジェクトがうまくいかなくて
会社がつぶれてしまったことに、とても自責の念が絶えず、自分を責める
不安定な日々に突入です。
それを見ていたお兄さんは、お姉さんに元気を出させようと、
ちょうど冬だったこともあり、一泊2日の温泉旅行を企画します。
ここぞの時は強羅花壇。プチ高級温泉でゆっくり。
早速予約を取るとその週の週末にお姉さんを連れて出かけました。
妙に明るく振る舞うお兄さんを、お姉さんは実はいとましく思っていましたが
私のために頑張ってくれてることもよく分かりますから、お姉さんは我慢我慢。
笑顔でにっこり応対です。でも、温泉につく頃には、眉毛の辺りがピクピク
引きつってきました。
強羅花壇はとてもゴージャスで、料理もおいしく、プールやマッサージなど
お姉さんはとてもリラックスした気持ちになりました。
入り口で女将が、毎度おこしやす、といったときは一瞬、ムッとしましたが
その夜はお兄さんに感謝しながらぐっすりと眠りました。
次の日の朝、お姉さんが目を覚ますと、隣で寝ていたはずのお兄さんが
居ません。散歩にでも行ったのかな、と思いながらお姉さんも起きあがると
ちょいと羽織って、庭に出てみます。
案の定、庭ではお兄さんがカメラ片手に、見事に切りそろえられた花壇を
ぱしゃぱしゃ撮っていました。朝の7時のことです。
何となくほほえましい光景を、お姉さんは庭の入り口のところから
何を考えるでもなく、ぼーっと眺めていました。
すると、突然お兄さんが、花に向かって話しかけ始めます。
「おーい 元気に咲いてるかな。僕も元気だから安心してね。
今日はね、お姉さんを連れてきたんだけど」
お兄さんの優しい目を見て、お姉さんは驚きました。
そんな優しい眼をしたお兄さんは今まで見たことがなかったからです。
チェックアウトをすますと、車の中でお姉さんは
お兄さんに何気なく尋ねました。
「あなたって、ねえ、もしかして寂しがりやさん?」
「ん? なんだ?何でそんなこと聞くの?」
「ううん。なんでもない」
その時お姉さんは去年のクリスマスのことを思い出していました。
〜つづく
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